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←戻る 制服シリーズ:総数103 スクール水着は水着に分離。 1キャラでも普段と異なる制服の絵。 制服シリーズ:総数103北高制服シリーズ:45 制服(男装・女装)シリーズ:25 体操着・チアコスシリーズ:21 制服(その他)シリーズ:3 陵桜学園制服シリーズ:3 榊野学園制服シリーズ:3 光坂高校制服シリーズ:3 コメントはこちらに 登録漏れ申請フォーム 北高制服シリーズ:45 制服関連で人気が高め。 +... お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/18 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/148 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/199 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/249 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/258 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/362 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/379 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/407 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/421 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/427 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/439 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/454 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/473 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/483 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/519 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/560 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/561 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/593 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/645 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/657 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/749 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1015 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1084 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1133 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1184 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1698 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1713 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2024 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2194 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2207 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2411 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2468 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2677 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2966 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3118 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3232 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3312 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3465 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3868 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4327 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4383 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) ニコニコRPG うp掲示板より No.97 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (jpg) No.263 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (jpg) No.1012 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (jpg) No.1055 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (jpg) 制服(男装・女装)シリーズ:25 +... お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/549 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/919 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/914 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/475 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/504 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/579 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/618 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/904 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/906 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1021 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1059 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1024 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/632 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/753 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1955 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2051 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2877 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3266 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3679 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3718 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3837 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4227 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4289 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4352 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) ニコニコRPG うp掲示板より No.588 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (jpg) 体操着・チアコスシリーズ:21 +... お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1061 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1096 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1260 (練習)ニコニコRPGお絵かき掲示板より No.326 OB1212806481929.png お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1271 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1329 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1555 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1690 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1946 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2195 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2099 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2174 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2369 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/2466 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3537 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3743 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4204 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4341 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4458 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4474 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) ニコニコRPG 交歓所より No.28 制服(その他)シリーズ:3 +... お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/698 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/773 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1352 陵桜学園制服シリーズ:3 +... お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1721 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1738 (練習)ニコニコRPGお絵かき掲示板より No.548 OB1214222633997.jpg 榊野学園制服シリーズ:3 +... お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/523 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1095 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/3685 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) 光坂高校制服シリーズ:3 +... お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/1304 お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4005 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) お絵かきBBS/お絵かき掲示板ログ/4262 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (idth=500) コメントはこちらに こんだけ細分化が進んだらもういいや。って気がしてきた。 -- 名無しさん (2008-06-15 09 17 16) 名前 コメント 登録漏れ申請フォーム 1.絵板で登録されていない画像を見つける 2.右クリックメニューからプロパティを選択 3.画像のURLをコピーしてこのフォームに張り付ける 以上の手順を踏んでいただければ、こっちで適当に張り付けます 編集できる能力のある人がやっちまってもいいんだけどね 反映されたコメントは随時削除していきます 名前 コメント ←戻る
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真紅がマンションのカギを開けるとそこには水銀燈、翠星石、金糸雀の 3人がニヤニヤと笑いながら立っていた。 「真紅ぅ~。見たわよぉ~、ウフフフ。あれジュンでしょォ~?」 「と、都会の男は狼なのですぅ~」 真紅が商店街の真ん中で言ったセリフをマンションに帰ろうとしていた 水銀燈達に聞かれそのまま見られていた。 「カナ達は真紅と彼氏の少し前を歩いていたかしら、いきなり後ろから 真紅の声が聞こえて見たら、フフフフだったかしらァ~」 「ちょっと金糸雀、フフフって何んなの?私とジュンは何もないのだわ!」 ムキになる真紅に悪戯っぽく微笑む水銀燈。 「そぉ~お?真紅とォ、ジュンてぇイイ感じに見えたわよォ~」 「勘違いしないで頂戴、水銀燈!」 水銀燈の言葉でさらにムキになる真紅。その横で翠星石は携帯を 取り出しメールを打ち始めた。 ~真紅に男ができた。チビでメガネ野郎な男と昼間から公園で キスをしながら抱き合う真紅と~ 「誰にメールしてるの翠星石。ちょっと見せなさい!」 素早く翠星石の手から携帯を取り上げメールを読む真紅の顔色が 変わると翠星石の姿は一瞬の間に消えていた。 水銀燈の部屋に立てこもる翠星石。そのドアを壊す勢いで叩く真紅。 「止めなくてイイのかしら?」 「イイんじゃなァ~い」 そういいながら水銀燈は冷蔵庫からビールを取り出し飲み始めると 水銀燈の携帯が着信を知らせる。 「あっメグぅ~。久しぶりじゃないぃ。どうラプラスは順調ォ~?」 「そのラプラスのことなんだけど、今ねCDを作ってるのよ」 ラプラスの曲を聴いたN’sレーベル側はその音楽性の高さとオディールの 聴く者を魅了する美しい声と歌唱力を高く買い、2ヵ月後のメジャー デビューを計画し始めていた。すでに曲は出来上がりCMのタイアップも 取り付け録音最終状態だとメグは水銀燈に知らせる。 「凄いじゃないメグぅ~!」 「うん、そうなの、私達ラプラスにとって信じられないくらいのチャンスよ」 メグの喜ぶ顔が受話器越しに見え、ついつい水銀燈の表情にもメグと同じ ような笑顔がみられた。 「それでね、水銀燈。ちょっとお願いがあるの」 「なぁに、お願いってぇ?」 ラプラスがデビューに向けて取り組んでいる曲は壮大なバラードで あった。それはCMのタイアップである車メーカーが提示した男女の 出逢いがもたらす喜びと悲しみを表すイメージにピッタリなのだが、 ラプラス達はあと少しの広がりと奥深さを曲に入れたかった。 そこでラプラス達が考え出した答えが真紅と水銀燈にサポートメンバー としてレコーディングに参加してもらうことであった。 「えっ、私と真紅がレコーディングに参加ァ?」 「そうよ、お願いできるかしら水銀燈?」 「もちろんよぉ、もちろん参加するわぁメグぅ」 その4日後、真紅、水銀燈、翠星石、金糸雀はレコーディングスタジオ の中にいた。 「すげぇのですぅ、翠星石達がいつも借りてるスタジオとはまるっきり 機材が違うのですぅ~」 「あたり前でしょォ~。恥ずかしいから、あまりキョロキョロしないでよぉ」 ガラス越しにラプラスが作った曲に合わせ、イヤホンを耳にあて目を閉じ 感情を入れて熱唱するオディール。 (これがプロになった人の唄なのだわ・・・) ほんの前までは同じ道を歩いていたラプラス。それが今ではこうして数多く のスタッフに支えられ主役として真ん中にいるラプラス。 スタートラインは一緒であったのに気付くと遥か前を走り始めたラプラス。 真紅達は複雑な心境で歌うオディールの姿を見つめていた。 オディールの歌を録り終えたテープを聴きながら真紅と水銀燈はメグの 説明を受ける。 「このパートで真紅ちゃんにコーラスとして入ってもらいたの。水銀燈は 私が弾くギターにいつもの水銀燈らしいトーンで入ってきて欲しいの」 説明を一通り聞くと真紅と水銀燈は先ほどオディールが歌っていた部屋に 入り今度はメグ達ラプラスがガラス越しに真紅達を見る。 「まずは慣らしの練習からです」 スタッフの指示の元でやや緊張しながらもイヤホンをつける真紅と水銀燈。 そしてラプラスのメロディーが流れ出し、その音に体を預ける真紅と水銀燈。 真紅のパートが近づく。フゥ~、ゆっくりと深呼吸し胸に空気を貯める真紅。 次の瞬間、ガラス越しに様子を見ていた全てのスタッフの動きが止った。 真紅のハリがありどこまでも伸びていくような声に聴き入るスタッフの人達。 オディールとは正反対の声質を持つ真紅の声が絡み合うようにオディールの唄 と溶け合っていく。そこに水銀燈のギターが独特のトーンを伴って同じように メグのトーンと融合していく。 「すげぇ、これ、そのまま録音してもOKじゃねぇの?」 レコーディングスタッフはそう言ったままガラス越しに真紅と水銀燈 を見つめていた。 それは真紅達にとって今まで手探りで探していた道、その道の向こうにある 扉がチラリと見えた、そんな瞬間であった。 歌い終わると真紅はガラスの向こうで見ている翠星石と金糸雀に目を向ける。 「凄ェのですぅ、みんな真紅と水銀燈にビビってるですぅ~!」 防音ガラス越しに声を出している翠星石の言葉は真紅と水銀燈には聞こえない が、呆然と真紅と水銀燈を見つめるスタッフ達と金糸雀の笑顔が全てを 物語っていた。 「何なのあの子たち・・・凄いわ」 「あっ、そうかミッちゃんは薔薇乙女の歌を聴くの初めてだったよね」 大学でメグ達と知り合いラプラスに入ったミチコは今始めて聴いた真紅の 歌と水銀燈のギターに驚きを隠しきれない表情になる。 そんなミチコを巴はクスッと小さく笑う。 「ねッ、前に言ったでしょ。私達ラプラスにとって最大のライバルは まだインディーズで曲すらだしていない女の子7人組みのバンドだって」 含み笑いで説明する巴のほうを向きさらに驚きの表情で聞くミチコ。 「じゃぁ、あの子達が前に話していた薔薇乙女の子なの?」 「そうよ。ほら、そこにいる2人もそうよ。翠星石ちゃん。金糸雀ちゃん」 巴はそう言い翠星石と金糸雀の肩を叩き新しくラプラスに入ったミチコを 紹介する。 「彼女は同じ大学でラプラスに入った碧みちこよ」 「こ、こんにちはラプラスでキーボードをヤルことになった碧みちこです。 ヨロシクね、えぇ~と翠星石ちゃん、カ、カナ・・・」 「カ・ナ・リ・ア。私の名前は金糸雀かしらッ」 防音ガラス越しに金糸雀とミチコが話しているのを見る水銀燈。 「ねぇ真紅ぅ。なんだか向こうが騒がしいわねェ。私達、ドジッたァ~?」 「さぁ、解らないのだわ。ただみんな私達を見ているのは確かね」 その時、いきおいよくドアが開きラプラスのマネージャーが入ってくる。 「こんにちは、私はラプラスのマネージャーの山本と申します」 そういい山本は真紅と水銀燈に名刺を差し出す。 「ラプラスのマネージャ~?」 水銀燈の言葉に山本はコクッとうなずき話を切り出す。 「君達の歌とギターはウチのラプラスから聞いてました。しかし 今こうして初めて聴き非常に興味が出てきました」 山本の言葉に水銀燈はあの日のENJUの白崎の言葉を思い出しイラツキ気味 に小さく言葉を出す。 「なぁにぃ?興味てェ~」 「単刀直入に言います。真紅さん、水銀燈さん。N’sレーベルから 曲を出してみませんか?」 (4)へ戻る/長編SS保管庫へ/(6)へ続く
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前ページ次ページゼロのミーディアム 「貴族の食卓を荒らす訳にもいくまい。ヴェストリの広場で待っている」 そう言い残しギーシュは去っていった シエスタがぶるぶる震え青ざめた表情で水銀燈を見つめている 「水銀燈…貴族をあんなに怒らせるなんて…おまけに決闘だなんて!」 「ふん…問題ないわよ。あんなボンボンのお坊ちゃんにこの私が遅れをとるとでも?」 そこに駆けつけてくるルイズ。どうやら事の一部始終を見ていたらしい 「ちょっとあんた!何してんのよ!」 「あら、お嬢様。ご機嫌いかが?」 「ご機嫌いかがじゃないわよ!決闘なんか勝手に受けちゃって!」 「あんな醜態をさらしたくせにおこがましくも薔薇を名乗るなんて気に入らないのよ。ましてやそれを私のせいにするなんて。それに…」 (それにあの人間はこの私の最も嫌う言葉を私に投げかけた。だから…許す訳にはいかない…!) 瞳を細め苦々しく心の内で呟く 『ジャンク』・『できそこない』水銀燈の最も嫌う…嫌悪すると言ってもいい言葉だ 前にも述べたがルイズに対するの『ゼロ』に匹敵する侮辱の言葉と言える ギーシュは彼女の前では決して言ってはならぬ禁句を言ってしまった この尋常ではない怒りは無論これによる物。今の彼女の心の中はそれ一色しかない いや、水銀燈の中にはもう一つそれとは少し違う感情があった あの時ギーシュの言った『できそこない』の対象は水銀燈だけではない。彼女のミーディアムたるルイズも含まれていた。彼女の仇名である『ゼロ』のオマケ付きで そのことが何故か水銀燈はひどく気に入らなかった 無意識の内にルイズの境遇の中に自分を垣間見たのかもしれない 誰かのために戦うなど自分の性に合わないと思う だからあくまで自分の名誉を守るついでにルイズの名誉を守ると理由付けて決闘を受けた だがルイズは水銀燈の胸中など知る由もない 「謝っちゃいなさいよ」 「謝るですって?断るわね」 「悪いことは言わないから!あんたが少しは不思議な力が使えるとしても、メイジには絶対勝てないの!」 「何よ、貴女心配してくれてるの?」 「べ、別に心配なんか…いや、それは…あんた一応私の使い魔なんだし…」 一人で勝手にしどろもどろしているルイズをよそに水銀燈はギーシュの連れに決闘の場を問いただす 「ヴェストリの広場だったかしら?それってどこなのよ?」 「ああ、こっちだ」 恐怖に震えるシエスタとなんだが一人ブツブツ言っているルイズに背を向け貴族に連れられ水銀燈は決戦場へと向かう 「水銀燈…」 シエスタはそのまま立ち尽くしその場から動くことができなかった そしてこちらははっと我に返ったルイズ 「ああ!待ちなさい!もう!使い魔のくせに勝手なことを~!」 小さくなっていく水銀燈の後姿をルイズは文句を言いながらを追いかけた 学院内の『風』と『火』の塔の間にあるヴェストリの広場。大きく場所の開けた中庭はまさに決戦場としては最適だと言える この短時間にどう聞きつけたか分からないがすでに広場では見物人が溢れかえっていた 「来たぞ!ルイズの使い魔だ!」 生徒達の一角から声が上がる 「――来たか」 腕組みした手に薔薇を模した杖を持ち静かに呟くギーシュ。一見冷静だが内心腸が煮えくりかえっていることだろう その視線の先に―― 漆黒の翼をはためかせ広場に入ってくる黒衣の少女 「――待たせたわね」 紫色の鋭い双眸でギーシュを睨みつける少女…水銀燈 広場の中央、険しい面持ちで対峙する両者。共に自分の信念とも言える物をを侮辱され、平和的解決などは有り得ない 「ちゃんと逃げずに来たようだね」 「貴方ごときに何故逃げる必要があるのかしら?」 ギーシュは水銀燈の挑発を聞き不機嫌にぴくりと眉を動かす。 「その減らず口がいつまでも叩けるか見ものだな」 そしてギーシュは杖を掲げ高らかに名乗りをあげた 「我が名はギーシュ!人呼んで『青銅』のギーシュ!我が前に立ちはだかりしルイズの使い魔よ、名乗られよ!」 そして頭上に掲げた薔薇を決闘相手に向けた 何処からともなく水銀燈の手に羽が集まり黒い薔薇を作り上げる そして水銀燈も薔薇を横に振り名乗りを上げた 「私は誇り高きローゼンメイデンの長女。第1ドール、水銀燈…!」 「ローゼンメイデン…薔薇乙女とは言ったものだな。ならばどちらが薔薇の名に相応しいかこの決闘で決めようじゃないか!」 「誇り高き薔薇の名…貴方にはすぎたものだわ」 そして水銀燈は手にした薔薇を放り投げる。決闘開始の合図はその薔薇が地についた瞬間 誰が決めた訳でもない。だが二人にはすでにそう言う認識だった。 文字通り暗黙の了解と言うものなのだろう 両者は薔薇がゆっくりとスローモーションのように落ちるよう感じた。 そしてそれがが地についた瞬間…! ギーシュは薔薇の杖を振り下ろし、水銀燈は背の翼を大きく広げる ――決戦の火蓋は切って落とされた 先手必勝と言わんばかりに水銀燈の翼から無数の羽が発射される まるでダーツを思わせるように発射されたそれは真っ直ぐにギーシュへと向かっていった。 しかしそれはギーシュに当たること無く彼の前方に現れた『何か』に阻まれた 「これは…!」 ギーシュの前に現れ羽の鏃(やじり)を阻んだのは甲冑を纏った女性型の騎士 ギーシュの薔薇…薔薇の形をした杖から放たれた一枚の花びらが変わったものだ 「言っておくが僕はメイジだ。だから魔法で戦う。故に…君の相手は僕の生み出した青銅のゴーレム、『ワルキューレ』がお相手しよう!」 「ちいっ!」 舌打ちしなおも漆黒の鏃を放つ水銀燈 だがそのゴーレム、ワルキューレは気にもかけずこちらへ突進をかける 黒い嵐を平然と突破し右拳を突き出すワルキューレ 金属的に強度の低い青銅と言えど金属には違いない 当たれば並みの戦士でも卒倒しかねない一撃、 ましてや水銀燈は人間よりも非力な人形。当たればそれだけで致命的である 「くっ…」 それでも水銀燈は翼をたたみ紙一重で横に避ける 流石はアリスゲームを生き残るだけのことはあると言えるだろう ローゼンメイデンとして姉妹で戦う宿命に生まれた彼女は戦闘経験も決して少なく無い だがワルキューレはなめらかな動作で水銀燈の向き直ると追い込むように左右の拳を連続で拳を突き出す そこまでの速さでは無い。冷静に見切れば避けきることも可能。だが… 「どうしたんだい?逃げているだけでは僕には勝てないぞ!」 その通りだ。どんなに攻撃を避けようともこちらから攻撃に転じなければ水銀燈の勝利は無い しかし相手は青銅の塊。彼女の持つ攻撃手段による破壊は限られている。 攻撃に転ずるならら彼女最大の攻撃をぶつけるしかない 「ならば…!」 翼を広げ後方へと飛びワルキューレと距離を大きく離す水銀燈。これにはワルキューレの追撃は間に合わないらしい 素早さはこの戦いで水銀燈の数少ないアドバンテージと言えた 間髪入れずワルキューレが迫ってくるが水銀燈はそれすら無視し力を背中の片翼へと集中させる。 ――イメージは…全てを噛み砕く黒竜のアギト そしてワルキューレが彼女の間合いに入った瞬間一気に力を爆発させた! その片翼が大きく逆立つと、拳を振り上げ殴りかからんとするワルキューレに食らいつく! 「なんだと…!」 突然水銀燈の背から現れた漆黒の竜にギーシュも目を見張る 黒竜のアギトと化した翼はワルキューレを噛み砕くことは出来なかったものの、それに食らいついたまま広場にある木に激しく叩きつけた 大木を揺るがし広場に大きく響く激突の轟音 さすがのワルキューレもその青銅の身体がひしゃげ、動かなくなると光の粒子となって消滅した (やったわ…) 息切れをおこしながら水銀燈は内心で安堵した 消耗が激しく連発は出来ない上に、足を止め力を撃たねばならねリスクの高い彼女最大の武器 だがその一撃は見事青銅のワルキューレを撃退したのだ 周りの貴族も大騒ぎだ 「やりやがった!」 「やるもんだな!ギーシュのあれを破るとは!」 しかし当のギーシュは全く持って余裕の表情 「フッ…見事だよ。僕のワルキューレを破るとはね」 「…おとなしく降参なさい。そんな玩具じゃ私は倒せないわ」 強気の発言だが先程の攻撃による水銀燈の消耗は決して少なくない。苦しげに語る様がそれを証明している 「フ…馬鹿を言っちゃいけないな」 ギーシュはあくまで余裕の態度を崩さない その自信に水銀燈に嫌な予感がよぎる… 「いやいや、すまなかった。考えてみれば麗しきレディとは言え我が決闘相手には違いない。手加減等するのは失礼だったな」 「手加減…なんですって?」 ギーシュが再度杖を振り、花びらが七枚地に落ちた 「言い忘れたが僕が錬金できるワルキューレは一体だけでは無いのだよ」 彼の言葉通り七枚の花びらが光を放ち人型のシルエットとなる しかも…今度のワルキューレは各々の手に多数の武器を持っていた これには流石の水銀燈も絶句するしかなかった (厄介な事になってきたわね…!) 「本気で行かせてもらうとしよう。かかれッ!ワルキューレ!」 ギーシュは薔薇を水銀燈に向けワルキューレをけしかける 突撃用のランスを突き出し迫り来るワルキューレが二体。長剣を携え後に続くワルキューレが三体 そしてギーシュの前方に立ち塞がり長剣と大盾を構えたワルキューレが二体 先頭のワルキューレが加速を付けその槍先で水銀燈を貫こうとする 辛くも一体目の突撃を身をひねりそれを避けた。その横を勢いも殺さず駆け抜けるワルキューレに水銀燈も背筋が凍る しかしすかさず二体目のランスが追撃をかける 「くっ!」 一体目を回避し態勢の崩れた水銀燈に迫り来る二本目の槍先。翼を大きく反対に振り重心を移動させ回避を試みる 先程まで自分がいた場所に槍が突き出され空を切った。こんな物を食らってしまえばひとたまりもない どうにか槍は避けられたもののワルキューレの猛烈な突進が水銀燈をかすめた だが…かすっただけなのに彼女の体に凄まじい衝撃が走る 「ぐうっ…」と呻き痛みに堪えるも肩を押さえ屈み込んでしまう水銀燈 だが敵は待ってくれない。この隙を逃さず頭上に剣を振り上げた三体目のワルキューレが切り込んだ。その剣が振り下ろされようとしている 水銀燈はとっさに羽を右手に集め自分の右手に剣を形成させる。ワルキューレの斬撃を受けとめるためだ だがいかせん分が悪い。非力な人形たる彼女ではワルキューレの重い一撃は受けきれないだろう 彼女は状況判断を誤った。しかし今の彼女にできる抵抗はこれいしかなかったのも事実 (しまっ…!) しまった!と言い終える前にワルキューレの剣が無情にも振り下ろされた 決闘を止めようと人混みをかき分けやっとのことで二人の決闘の見える位置まできたルイズ だがその目に写るのは今まさにワルキューレの刃が水銀燈に振り下ろされると瞬間 ルイズは思わず目を覆ってしまった ガキィィィィン! 金属同士のぶつかり合う音が響く (え…?) 水銀燈は何が起こったのかわからなかった …振り下ろされた剣はなんと自分の両手の細腕に握られた剣で止められていたのだ。自分自身も信じられなかった それだけでは無い。 体の奥底から力がわいてくるような不思議な感覚 水銀燈の剣を持った右手には契約時に刻まれたルーンがまばゆく輝いていた ワルキューレの重い剣を自らの剣で受け止めた水銀燈 彼女の細腕にはそれ程までの力は無い筈だ 変わったことと言えば左手に輝くルーン。とっさに剣を握った瞬間に光り出したものだ どうにか一命はとりとめた 疑問は尽きないところだが今は目の前のワルキューレに集中する 鍔迫り合いの形となり、力は均衡し両者とも剣は動かない 水銀燈は急に力を抜きワルキューレの側面に回り込む。 突然の脱力により勢いを止められず前に崩れるワルキューレ 水銀燈はその勢いを剣に乗せ体を回転させつつ遠心力をのせた斬撃をワルキューレの右手に叩き込んだ 宙に舞う剣を持ったワルキューレの腕。すかさずそのまま脳天から叩き斬ろうとするが… 水銀燈の背後に感じる殺気、ルーンにより感覚も研ぎ澄まされているらしい。後ろも振り返らずに宙返りし、背後から襲いかかってきた四体目のワルキューレの頭を飛び越える 水銀燈を狙ったはずの横薙に薙払われた四体目の斬撃が右手を飛ばされた三体目のワルキューレに襲いかかった 青銅同士のかち合う耳障りな音とともに刃は三体目を切り裂きそれを消滅させた その隙に四体目の頭上背後に回り込んだ水銀燈も天高く剣をかかげその脳天に振り下ろす 再び鳴り響く金属のかち合う音 しかし…水銀燈の渾身の一撃を食らったはずのワルキューレの頭は少し頭を切り裂かれただけ 「そんな…!」 水銀燈は驚愕の表情を浮かべる ワルキューレの剣を受け止め、青銅の塊であるその腕を切り裂いた彼女の剣はそれで限界が来ていたのだ。ルーンの強化は武器にまでは及ばなかったらしい 宙を舞う金属の破片…水銀燈の持つ剣が…澄んだ音と共に砕け散った… 水銀燈の意識が折れた剣に奪われた時間は一秒にも満たない。が、ワルキューレが体勢を立て直すには十分だった 振り向き様に放たれるワルキューレの袈裟懸けの刃。意識をそちらに向けた時にはもう遅い とっさに翼前面に展開し盾にするが…それでも大きく吹き飛ばされ地面に叩きつけられる水銀燈。それも頭から落下する危険な落ち方だ 「ぐうっっ!」 苦しそうに呻く水銀燈を目の当たりにし、ルイズが駆け出した 「もういいじゃない!メイジ相手にあんたは十分やったわ!だからもうやめて!」 「断るわ…!例えこの身が朽ちようとも…あの人間を許す訳に行かない… この私を…そして『貴女』を『できそこない』なんて…言わせない…!」 「え…?」 「邪魔よ!どきなさい!」 水銀燈はフラフラと立ち上がり駆け寄ったルイズの手を振り切りギーシュへと向かっていく たった一撃食らっただけ。それなのに彼女の受けたダメージは深刻だった (あの娘が決闘を受けた理由…まさか私の為に…?) 水銀燈の背を見つめルイズは思う そう問えば水銀燈は頑なに否定するに違いない。 だが決闘の半分の理由はまさしくそれだった。今の『貴女を』と言う言葉は無意識に漏れたものだ 水銀燈は…自分自身とルイズの誇りの為に戦っている 左手のルーンの輝きも失せ、体は満身創痍。それでも彼女は戦うことを止めない 水銀燈はワルキューレを無視しその操手たるギーシュ本人を狙うが… その行く手を阻むランスと剣を持ったワルキューレが二体ずつ 「破れかぶれで僕自身を狙うつもりかい?無駄なことを!」 仮にこれを凌げてもギーシュの前には盾を構えたワルキューレが二体。勝つのはもはや絶望的だ そして決闘開始時の水銀燈の素早さは見る影もない ギーシュは四体のワルキューレで水銀燈を囲んだ 「最後のチャンスだ。もし君が今僕に謝罪すればこれで手打ちにしよう!続けるならそれ相応の覚悟をしてもらうがね!」 武器を構えジリジリとワルキューレが迫る 「謝罪ですって…?」 「そうさ!『私のせいで2人のレディの名誉を汚してしまい申し訳ありませんでした。薔薇の名は貴方にこそ相応しい!』そう言えば君を許そうじゃないか!」 断れば即座にワルキューレの武器が水銀燈を貫くことだろう この上なく危機的状況。それでも彼女は退かない 「死んでも…嫌…!!」 苦しい表情に不敵な笑みを浮かべ言った 「ならば…望み通り死なせてやろう!やれ!ワルキューレ」 ギーシュの命により剣が、ランスが、一糸乱れずに振り下ろされる 「くっ!」 痛む体に鞭打って翼を羽ばたかせ上空へと逃れる水銀燈。四方を囲まれた今逃げ道は上方のみ しかしそれはギーシュの思考の予測範囲 「なかなか頑張るじゃないか!だが甘い!」 ギーシュはワルキューレを下がらせると短くルーンを唱え、大地に向けた杖を振り上げた 次の瞬間、水銀燈が立っていた地面が隆起し槍の先のような岩がまるで高射砲のように放たれる ワルキューレの猛攻を凌ぎ多少安堵していた水銀燈に襲いかかる対空放火 「く…ああっ!」 何発もの岩の穂先に突き上げられ再び墜落し地面に叩きつけられた そしてベキッ!と言う何かが折れるよな嫌な音 彼女の象徴にして戦いの生命線たる黒い片翼があらぬ方向に曲がっていた… 勝敗はついたも同然と言える。しかしギーシュは決闘を止める気はないらしい 「降参しろと言っても無駄なのだろうね?すぐに楽にしてやろう!」 かろうじて水銀燈は意識を保っているがもはや体は死に体、それでも立ち上がろうとする そこに割り込んでくる人影 ワルキューレから水銀燈を庇うように両手を広げ立ちふさがったのは鳶色の瞳を潤ませたルイズ 「何のつもりだい?ルイズ。神聖な決闘に割って入るとは!」 泣き出しそうなのを我慢してルイズは言った 「もう勝敗は決したわ。だからお願い、この子を、水銀燈を許して」 「断る。君の使い魔から受けた数々の無礼、許し難い。彼女から謝罪の言葉でもでれば別だがね」 ルイズは瞳を閉じ少し間をあけるとギーシュに悔しげに告げた 「わかったわ…この子が謝らないなら…つ、使い魔の主人たる私が…しゃ、謝罪するわよ…」 「ルイズッ!止めなさい!!」 水銀燈が声を荒げる 「あんたは黙ってなさい!水銀燈!」 ルイズも俯き声を荒げた。地面には彼女の涙がポタポタと落ちている それでも水銀燈は言った 「いいえ!言わせてもらうわね!ルイズ、貴女がやろうとしていることは私、そして他ならぬ貴女自身を侮辱していることも同然!」 「で、でも!」 「貴女は認めるの…?自分が『できそこない』だと、自分が『ゼロ』だと!」 「そ、それは…」 (自分だってそんなこと認めたくない。だがここで止めなければ水銀燈が…) 「認めたくないのね?そう、それでいいのよ。仕方がない?そうしなきゃ私が助からない?そんな理由で頭を下げる必要など無いわ! 貴女は誇り高き私のミーディアム、自分自身の誇りを裏切る真似等許さないわ!」 本当は止めなきゃいけないのに…不本意でも謝らなければならないのに… ルイズはそう思いつつも水銀燈の強い眼差しを受け何も言えなくなった それを見ていたギーシュは苛立ちながら告げた 「下がりたまえルイズ!もはや君にできることなど何もないのだからな!」 ルイズの心に突き刺さる心無い言葉 しかし水銀燈はふと何かを思い出したように言った 「いや…あるわ…!ルイズ。貴女にできることが…」 「わ…私にできること…?」 「覚えてるかしら…?契約した夜に言ったことを。貴女のミーディアムとしての力、使わせてもらうわ!」 その瞬間、ルイズの右手にした薔薇の指輪が熱を帯び眩く輝き出し水銀燈の体から光が溢れる。 あまりの眩しさにギーシュが、見物人達が目を覆う その光がおさまり中から現れた水銀燈は土にまみれていたドレスは埃一つなく折れた翼も修復され、傷や失った体力も完全に回復されていた そして凛とした態度でギーシュ、ワルキューレを見据える 「――刮目なさい。ローゼンメイデンの…真の力を!」 完全に復活をなし遂げた水銀燈が高らかに告げた 「何度やっても無駄だ!」 ギーシュは剣を持ったワルキューレをけしかけた 水銀燈は修復された黒き翼を広げそこから再び無数の羽を飛ばす 「今更そんな物を!そんな物が僕のワルキューレに効くものか」 しかしギーシュは即その認識を改めることになる 脆弱な筈の彼女の羽、それがワルキューレをいとも簡単に射抜いた 「え?」 予想外の事態に唖然とするギーシュ ワルキューレは漆黒の矢…否、漆黒の弾丸と化し羽による黒い嵐に蹂躙され為す術もなく破壊されていく 文字通り蜂の巣となった二体のワルキューレはガタッと膝をつき前のめりに倒れた 「くっ…!ひ、怯むな!かかれぇ!」 ギーシュは今度はランスを携えた二体を向かわせる 迎え撃つ水銀燈。彼女の右手に再び羽が集約し剣を形成。そしてルーンもまた輝き出す 一列に並んで突進してくるワルキューレ。しかしそれが加速に入る前に一瞬でその間合いに踏み込んだ 体が羽のように…いや風のように錯覚した。そして腰だめに構えた剣をすれ違い様に一閃! 突進を始めた筈のワルキューレがピタリと止る。剣を振り抜いた水銀燈はギーシュの方を見やりその剣を彼に突きつける 「闘いは…これからよ!」 水銀燈の背後でズッ…という音と共にワルキューレの上半身がずれて地面に落ちた 突然凄まじいまでの力を発揮しゴーレムを一瞬で蹂躙した水銀燈にギーシュはパニックをおこす 「うわあああ!行け!お前達も行くんだよ!!」 自分の守りに付けていた二体を外し、けしかける 盾を掲げ分厚い防御を維持したまま突進してくるワルキューレに水銀燈は一瞬で接近し一体を斬りつけた 堅固な盾を物ともせず肩から胴まで刃を切り込ませる が、そこで刃が止まった。切り裂かれたワルキューレが水銀燈の手をがっちりと固定し体をはって動きを封じる 「かかったな!そっちはフェイクだ!本命は後ろさ!ワルキューレごと切り裂いてやる!」 パニックを起こしても考えてるところは考えてるらしい その言葉通り押さえられた水銀燈の背後からワルキューレの片割れが襲いかかった しかし、水銀燈は「フッ…」と笑みを浮かべ翼の片方を逆立てる 再び彼女の背に現れる翼の黒竜。だがそれは一瞬で形成され背後のワルキューレにそのアギトを開いた ガチン!と言う音と共に顎が閉じワルキューレの上半身をかっ攫う 半身を食いちぎられたそれ下半身だけで力無く後ずさりし、バタリと倒れ動かなくなった 水銀燈は押さえつけていたワルキューレも力任せに真っ二つに切り捨てると服についた埃をパンパンと払った 「ばかな…僕のワルキューレが…ぜ、全滅!?」 ギーシュは目を大きく見開き恐怖にうち震える 「――貴方自慢の手駒は葬り去ったわ。…さあ、覚悟はよろしいかしら?」 水銀燈が冷たく言い放つ ギーシュは震えながらも、も杖を手離さなかった。貴族としての意地か、恐怖で離せないだけか ゴーレムの錬金は間に合わない。ワルキューレが錬成されている間にギーシュは一瞬で水銀燈に真っ二つにされるだろう。 自分だけの力でこの化け物と戦わなければならない…ダラダラと冷や汗を流しギーシュは思った。それでも―― 「今更あとに退けるかぁぁぁぁぁ!」 絶叫しルーンを唱え大地を隆起させるとそこから岩石を水銀燈に打ち出した 岩石は水銀燈を射抜き…いや射抜いたと思った瞬間に彼女の体が霧散した 「残念、残像なの」 ギーシュの足元からする声。水銀燈は地面すれすれにギーシュに切り込み翼で足を払う ギーシュは転倒しつつも杖を離さず水銀燈に杖を向け魔法を放とうとするが… 彼の闘志もそこまでだった。水銀燈は杖を斬り払うと返す刀をギーシュの喉元に突きつける 「チェックメイト…!」 ギーシュの見上げた先には冷たい笑みを浮かべ自分を見下ろす水銀燈の顔 「ま…参った!」 ギーシュは顔を青ざめさせそう言うことしかできなかった ギーシュの敗北宣言を聞き周りから歓声があがる しかし…水銀燈はギーシュの喉元から剣を動かさない。冷や汗をかきつつギーシュが不穏に思っていると水銀燈が口を開いた 「貴方…黒薔薇の花言葉をご存知かしら?」 突然の意味の分からぬ質問。何も言わないギーシュに構わず水銀燈は続ける 「黒薔薇の花言葉に決まったものは無いの…でも、私が知ってるのはこの二つね」 そしてその顔に狂気とも言える笑みを浮かべ言い放つ 「『あなたを一生許さない』・『彼の者に永遠の死を』」 「あ…あ…」 ギーシュの膝がガクガクと笑い腰が抜ける (殺される…嫌だ…死にたくない!)そうは思っても体が動かない 自分の使い魔の勝利に安堵していたものの、水銀燈の物騒な物言いにルイズがすかさず待ったをかける 「水銀燈!駄目よ!殺しちゃ駄目!」 止めに入ったルイズのまだ涙に濡れた瞳を水銀燈は剣をギーシュから離さず見据える。そして一つため息をついた 「ふぅ…冗談よ。命まではとらないわ」 ギーシュからようやく安堵の吐息が漏れた 「ただし、決闘のけじめとして私の言うことを聞いてもらうわよ」 「あ、ああ…勿論だよ…」 ギーシュはどんな無理難題を言われるか分からないが殺されるよりマシだと結論づけて承諾した 「さっき言った『できそこない』と言うのを訂正なさい」 「…はい?」 ギーシュは彼女の言ってることがイマイチ理解出来なかった 「そ、そんな事でいいのかい…?」 「そんな事って何よ、私にとっては大きな問題よ」 ギロリとにらむ水銀燈に慌ててギーシュは要求をのんだ 「あ、ああ!申し訳ない!先程の『できそこない』と言う言葉は訂正させてもらうよ!君こそが気高い薔薇として相応しい!!」 「一言余計だけどまあいいわ…でももう一人忘れてないかしら?」 ルイズに目配せして言う水銀燈 「ル、ルイズ!少々気が立ってたんだ!思わず君を『できそこない』呼ばわりしてすまなかった!今後二度と『ゼロ』等とも呼ばないよ!」 「あ、いや、私は別にそんなには…」 少々ばつが悪そうにルイズは呟いた だが水銀燈はこれで満足したらしい 「結構。あと、これはお節介だけど貴方を離れた二人にも謝罪するのね。貴方のせいであの二人の面目も丸つぶれよ」 「あ、ああ…冷静に考えれば僕の方が悪いね…」 今更だがギーシュは反省しだす 「自らの非を認めるのも紳士の勤めよ。薔薇を名乗るならもっと精進なさい」 水銀燈は踵を返す 「行きましょ、ルイズ」 そして広場を去っていった 「あ!水銀燈!待ちなさいよ!」 慌ててルイズは後を追った 「見たかね?ミスタ・コルベール」 「ええ…」 オスマン氏とコルベールで「遠見の鏡」により決闘の一部始終を見ていた 「よもや『ガンダールヴ』に関する報告を聞いた矢先にその力を見ることになろうとはな…」 「ええ…しかしもう一つ、あの後さらにあの人形から不思議な力が…」 「ふむ、あの使い魔、謎が多すぎるのう…あの人形何者なのじゃろうか?」 「『ディテクト・マジック』の反応ではUnknownとしか出ませんでしたが…」 「『誰とも知れぬ者』か…ますます分からんもんじゃな…ミスタ・コルベール。この一件はわしが全て預かる。無論王室にも他言は無用じゃ」 「こんな人形を耳にすれば王室はのどから手がでる程欲しがることでしょうな…かしこまりました」 部屋への帰り道にルイズは水銀燈に聞いた 「ねぇ…なんであんなにボロボロになるまで戦えるのよ?」 「決まってるじゃないの。誰だって心の内に一つくらい絶対に譲れないことがあるのよ」 「それがあの『できそこない』扱いされたこと?それって命までかけるようなことなの?」 「だから絶対に譲れないってことなのよ、命を賭けてでも自分の誇りは偽らない。それが私が薔薇乙女として生まれた定めよ」 ルイズは誇らしげに言う水銀燈に本当の貴族としてのあり方を見た気がした 「あんた言ったわよね…?私の誇りの為にも戦ってるって、あの戦いは私のためでもあったの?」 「!!そ、それは…」 水銀燈は口ごもった あの時思わず漏れてしまった言葉 「それは、つ、ついでよ!私の誇りを守る為のほんの気まぐれよぉ!」 水銀燈は本当は本心で漏らしたことだがそうだとは言えなかった 「んな…!」 ついで扱いされてちょっと腹が立つルイズ 「貴方こそ、私の危機に泣きながら謝ろうとしたわよねぇ?何?そんなに私のことが気になったのかしらぁ?」 いつもの調子を取り戻し水銀燈が茶化す 「か…勘違いしないでよね!べ、別にあんたがどうなろうと知らないけど。世話係が居なくなるとふ、不便になるじゃないのよ!」 こちらも純粋に水銀燈の身を案じて謝罪しようとしたのに思わず憎まれ口を叩くルイズ 「何よそれぇ!私を使用人扱いにしかてないってことぉ?」 水銀燈もその物言いに不平を漏らす 「そ、そうに決まってるわよ!あんたなんか私にとってそんな認識なんだから!…で、でも今日の活躍に免じてご飯抜きは撤回してあげなくもないわ!」 「ふ…ふん結構よぉ!こっちだってあんな傲慢知己な貴族なんかに囲まれて食事するなんて御免よ!またあんな事に巻き込まれるかもしれないし! でも…でも貴女がどうしてもと言うならついて行ってあげなくもないわぁ!」 …このツンデレどもが ああだこうだ言い合いを繰り返す二人。息が続かなくなるまでその応酬が続いた。双方息をぜぇぜぇさせて言葉が続かなくなる そしてルイズが突然真面目に告げた 「でも約束して…もう二度とこんな無茶な決闘は受けないって」 「何よ。唐突に」 「黒薔薇の花言葉、私も一つだけ知ってるわ…」 「…聞かせてもらおうかしら」 「それはね…『貴女はずっと私のもの…』…勝手にどっか行っちゃったりしたら許さないんだから…」 ルイズは恥ずかしそうに言った 水銀燈は並んで歩くルイズを追い越し、彼女に顔だけ振り向けて言った 「ま、善処してあげるわ」 その顔は裏表の無い純粋な微笑みを浮かべていた 今更だが…決闘中に初めて互いの名前を呼びあった二人の少女 これはほんの少しだが二人の距離が近づいた証なのかもしれない 前ページ次ページゼロのミーディアム
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飛び交う黒い羽 それを切り刻む重たい鋏 二人は自分の命を賭けたゲームの真っ最中だった 「ああしつこいわぁ、とっととやられちゃいなさいよぉ」 「それはこっちの台詞だね水銀燈」 両者一歩も譲らない闘いに見えたが、僅かに水銀燈の顔に余裕が見える 「これでくたばりなさぁい!」 「くっ…!」 襲いかかる羽に鋏だけでは対応できず、堪らず蒼星石はその場から離れた 「ちょっとぉ、逃げるならローザミスティカ置いてきなさいよぉ」 「………ッ!」 「あはは!無駄よ無駄よぉ!いくらでも追いかけてあげるわ…っ!?」 世界が変わると同時に突然声のトーンが変わる水銀燈 蒼星石は不思議に思い後ろを振り向いた 「な、なにこの世界いぃ…」 蒼星石が何も考えずに飛び込んだその世界は、透明度の高い水が流れるなんとも美しい世界だった しかし、青く澄んだ水のように、水銀燈の顔も青冷めてゆく さっきまで大きく広げていた羽は水銀燈の体を包むように畳まれている 蒼星石はその情況を上手く飲み込めないまま、とりあえず隙ありというかんじで鋏を水銀燈の首元にあてがった 「…! しまった…」 「さあ水銀燈、そのまま手を頭の上にあげてしゃがむんだ」 「い、いやよぉ…やめてぇ…」 「? ふざけるのはやめるんだ、さあ早く言われた通りに…」 「いや…やめてよぉ…」 「!?」 蒼星石はぎょっとした あの水銀燈が涙を零している 「す、水銀燈…?」 「やめてぇ…羽濡らさないでぇ…」 「え?」 「水怖い…いやぁ…」 「はあ!?」 ・ ・ ・ 「落ち着いた?」 「………ありがとう」 「…びっくりしたよ」 「…死にたいわぁ」 聞くと、どうやら水銀燈は水が苦手らしい 羽が濡れると力が抜け、震えが治まらないんだとか 「それじゃあ、泳ぐなんてもっての他なんだ?」 「…たしか蒼星石は、泳ぎが得意だったわよねぇ」 「お父様は、アリスは泳げる泳げないは関係ないって言ってたけどね…」 「でもいいじやない…羨ましいわぁ…」 「水銀燈、君…泳げるようになりたいのかい…?」 水銀燈は何も言わずに俯いた 「……僕が…教えてあげようか」 「……え」 水銀燈は再び顔を上げ、蒼星石と見つめ合った 「いいわよぉ…こうやって助けてくれただけでありがたいわぁ…」 「でも…泳げるようになりたいんだろう?」 「…………いいのぉ?」 「もちろんだよ」 「なんか悪いわぁ」 「いいんだよ、ふふふ」 「…何その笑い」 「君の水着姿、楽しみだよ」 「なっ……!」 「あはは、じゃあ明日からここで特訓ね?」 僕らだけの秘密の場所だよ そう言う蒼星石に、青かった水銀燈の顔は、赤く色付いたんだとか END
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柿崎めぐ -かきざきめぐ/Megu kakizaki 水銀燈のミーディアム 登場作品:Rozen Maiden/ローゼンメイデン(漫画)/ ローゼンメイデン トロイメント/ローゼンメイデン オーベルテューレ .声 優 :河原木志穂/登場せず .特 技 : .趣 味 : .ファン名: .あだ名: 水銀燈の契約者の少女。 原作では水銀燈の螺子を巻いたが、水銀燈がなかなか契約を結ぼうとせず、Phase37で遂に正式に契約。 水銀燈が契約を結んだ目的はめぐを雪華綺晶から守るためのようである。 アニメでは第2期から登場。水銀燈の螺子を巻いた訳ではないが、薔薇水晶に導かれるまま一人でに目覚めた水銀燈に対し、一方的に契約を結んだ。 有栖川大学病院に心臓の病で入院しており、完治するには移植手術が必要だが、幼少時からの度重なる短命宣言で生きる気力を失っている。 普段はベッドで横になっているが、外を歩く程度はできる。 本人は病弱な自分を「壊れた子(ジャンク)」と言っている。 自分の前に現れた水銀燈を「天使さん」と呼び、彼女が自分の命を使い切ることを望んでいる。 かつて発作を起こした時に、祖母がいつも自分のために歌ってくれた『からたちの花』を水銀燈のためにいつも歌っている(アニメでは「瞬」)。
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水銀燈「悔しかったらディアブロより高い車でも買ってみなさい!ちなみにこれは3000万したわぁwww」 薔薇水晶たちを高笑いしながら罵倒する水銀燈。 雪華綺晶「さて、私達も帰ろう?今日は車で来てるし・・・」 薔薇水晶「・・・・・・」 水銀燈「あらぁ、あなた達も自動車通勤だったのぉ?まあ、このディアブロより高い車なんてありえないけどぉ・・・クスクス・・・」 何もいえない薔薇水晶を引きずって駐車場に連れて行いった。 その口は若干の笑みでつりあがっていた。 10分後・・・ 水銀燈「な、なにあれ・・・」 駐車場から出てきた幅3.75m、全長9.67mの巨体を目にして固まる水銀燈。 出てきたのは世界3大最強戦車の一つ、ドイツのMBT「レオパルド2」。 雪華綺晶「こっちの車は5億円だよ、水銀燈。」 水銀燈「ま、負けた・・・」 本体の操縦席から上半身を出してあっかんべーのポーズを取る雪華綺晶。 ナンバープレートが付いたその戦車は自宅の方向へ走り去っていった。 その後、水銀燈は薔薇水晶に自動車を自慢する事はなくなったという。
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私立有栖学園の校長・・・ローゼン、彼は変人でもあり奇人でもある、しかし彼の本当のやさしさを知る者は少ない 一方私立有栖学園の教師の一人水銀燈、彼女も悪く言えば変人でも奇人でもあるが、根は優しい先生である ○月×日 雨 水銀燈「なによぉ~・・・そんなに怒らなくてもいいじゃなぁ~い」 水銀燈の声が職員室に響き渡る・・・しかし 真紅「許すものですか!くんくん人形を返しなさい!」 翠星石「おめぇ~のした事は重罪ですぅ~、いい加減謝りやがれですぅ!」 蒼星石「悪いけど、今回は許しがたいな、僕の帽子弁償だけでは済まないよ?」 金糸雀「よくもカナのバイオリンを壊してくれたかしらー?」 雛苺「うにゅ~を返すのー!」 雪華綺晶「戦車を破壊して許されると思っているのか!」 この場に居る教師全員が敵であった・・・それもいつもなら仲介に出てくる蒼星石や揉み消してくれる雛苺に金糸雀まで そう、水銀燈は今完全に孤立していた・・・ 水銀燈「な・・なによぉ、皆して虐めなくてもいいじゃなぁ~い・・・」 若干反省したのかいつもの甘ったるい口調ではなく少々の怯えが混ざる しかし他の教師の猛攻は続き・・・・ 真紅「いい加減にしてよね?この脳みそジャンク!」 翠星石「食材を無駄にするなんて人間として風上にも置けないですぅ!」 蒼星石「悪いけど、これから友達関係見直させてもらうよ」 金糸雀「もう口利いてあげないのかしらー!」 雛苺「べ~~~~~っだぁ!」 雪華綺晶「ナチスを侮辱した事、悔い続けるがいい!」 ・・・・・ガタッ!全員が言い続けてると思いっきり席を立つ水銀燈 水銀燈「・・・・・・・・」 そして無言のまま職員室を出て階段を上がっていく、その目には確かに大粒の涙があった まだ階段を上がる、これより先は屋上である・・・・その時 薔薇水晶「あ、水銀燈先生おはようございます」 奥から歩いてきた薔薇水晶が挨拶をする 薔薇水晶「あのー、ここから先は屋上ですよ?」 いつもの元気がない水銀燈を心配する薔薇水晶、しかし水銀燈は無言のまま階段を上がる 薔薇水晶はそれ以上とめる事もなく頭に?を浮かべながら職員室へと向かった そして職員室に入ったが、そこはいつもの雰囲気ではなかった・・・そうなにかジメっとした感じが漂う陰気な空間であった 薔薇水晶「・・・・・・・・・ぉ・・・おはようございます・・・」 薔薇水晶がおどおどして入る、しかし挨拶は返ってこない・・・ いつもなら水銀燈の甘ったるい挨拶に始まって色々な挨拶が返ってくるがそれもない・・・そんな時 ガラッ!!!いましがた閉めたばかりのドアが開いた ローゼン「グッッッッ・・・・・・モォォォォォォニィィィィン!」 空気等まったく読まない奴が入ってきた・・・・ ローゼン「ん・・・ん・・・・?・・・・んんんんんん!?、どうしたんだい皆お通夜みたいな顔してぇ!ははぁん、さては僕が来たから照れてる?」 そんな事を一人浮かれて喋るローゼン・・・・そこで薔薇水晶が無言でローゼンの腕を掴み廊下へと引きずり出す そして廊下に出た二人・・・そんな中先に口をあけたのはローゼンだった ローゼン「水銀燈先生が居ませんでしたね、しかも皆さん暗い顔持ち・・・喧嘩でもしましたか?」 そこにはいつものローゼンとは打って変わって凛々しい男性のローゼンがあった そんなローゼンに一瞬見惚れた薔薇水晶だったが・・・ 薔薇水晶「・・・・水銀燈先生泣いてたの・・・なんでかは判らない・・・雨なのに屋上に行った・・・」 いつもよりはっきりとローゼンに話す薔薇水晶、そしてそれを聞き小声で「ありがとう、後は任せておきなさい」と言い階段を上がるローゼン 薔薇水晶は事態の内容すらわからなかったが、これで大丈夫だと確信した 一方屋上では水銀燈が雨の中屋上から校庭をただ一人見ていた 水銀燈(なんでこんなことになっちゃったんだろ・・・少しだけイタズラしただけなのに・・・) いつもの水銀燈ならこんなことは欠片も思わないだろうがこの時は違った・・・ ちょっと構って欲しい、ちょっと付き合って欲しい、ちょっと一緒に居て欲しい、これの延長線でイタズラの度が過ぎてしまっただけなのだが・・・ 水銀燈「・・・・皆に嫌われてるならいっそ・・・」 そう呟く水銀燈・・・・しかし ローゼン「いっそなんだい?そこから飛んで夢の彼方にでも行くつもりか~い」 等と緊張感の欠片も無い声が水銀燈に届き、その声の主に振り返る水銀燈 水銀燈「な・・・なによ!あんたなんか呼んでないんだからとっとと消えなさい!」 それに対し怒りをあらわにする水銀燈これに対して穏やかに答えるローゼン ローゼン「そうもいかないなー、だって僕校長だしー、それにお通夜みたいな職員室は耐えられないしね」 と、あっさりと切り返す 水銀燈「馬鹿いわないで頂戴、大体貴方みたいに何の考えも持たない人間が・・・」 そこまで言ってしまったと思った・・・ローゼンは自分を救いに来たのにそれをまた自分で手放したのだと自分を責める ローゼン「だねー、ほぉーんと考えもってないよー」 しかしそこには怒りや侮蔑の回答ではなく、いつものローゼンの回答があり・・・・次の瞬間彼の顔を見て世界が止まる ローゼン「でもね、僕は僕のやり方でだけど今の有栖学園が崩れないようにしたいんだ、もちろんそこには水銀燈先生の存在もあるよ」 口調はあくまでも穏やか・・・いやいつもみたく冗談等の意味が含まれない穏やかな声・・・・ ローゼン「君が何をしたか知らないけど、一度躓いたぐらいで飛び降りようとか考えるのは穏やかじゃないなぁ・・・」 変わらぬ口調、しかし最後の飛び降りようとの所には怒気が確かに含まれていた・・・ ローゼン「じゃぁ、僕はラプラスから逃げないといけないから戻るね♪」 そして戻るローゼン、そこにはいつもの・・・本当にいつものローゼンが居た 残った水銀燈は一人考えた・・・が、もう答えは決まっていた・・・ 泣いていたその顔は今ではすっきりとした顔に戻っている・・・ 水銀燈「ほぉ~んとに、私が居ないだけでお通夜とか・・・みんなおばかさぁ~ん・・・」 まだ涙声だが汚れの無い声で職員室に戻る水銀燈の姿があった・・・ いつの間にか雨は止んでいた fin
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「……あら、雨だわぁ…」 ポツポツと、空から水の雫が落ちてきた。 あっという間に辺り一面を濡らし、少女も気が付けばずぶ濡れになっていた。 長い銀髪や着ていた服が、水を吸って重くなる。 何故か、少女はそれほど気にならず、そのまま暫くぼんやりとしていた。 「水銀燈?何してるの?」 繰り返し聞こえてくる雨音以外に、一つの声がした。 水銀燈が振り替えると、青い傘を持った少女がいた。 「ずぶ濡れじゃないか…。風邪ひいちゃうよ?」 持っていた傘を水銀燈に傾け、心配そうに見つめる。 「…別に構わないわぁ」 「僕が嫌だよ」 少々怒り気味に、水銀燈の言葉を一刀両断する。 そんな少女が何故かおかしくて、水銀燈は小さく笑う。 「な、何笑ってるの?」 「別にぃ」 本当は大笑いしたい衝動を抑えて、水銀燈はいつものクールな表情に戻った。 「で、何してるのぉ?」 「それはこっちの台詞だよ…。雨降ってるのに傘も差さないで何してたの?」 「んー…そうねぇ……。何だか此所にいたら、蒼星石に会える様な気がしたのよぉ」 「……へ?」 水銀燈らしからぬ、何やらロマンチックな言葉に、蒼星石は一瞬固まった。 「ふふ、私らしく無いわねぇ。でも、何だかそんな気がしたわぁ」 「……はぁ…」 蒼星石はただただ、首を傾げるだけだった。 「…ん、なんか寒いわぁ……くしゅんっ」 「風邪ひいちゃうと大変だ……僕の家、すぐそこだから来る?」 「…そうねぇ、お言葉に甘えるわぁ」 愛しい人の家に上がり込む理由を手に入れた水銀燈は、どのようにして愛しい人を食べるか、作戦を考えるのであった。 蒼「ブルマをはいてくれないか水銀燈」 銀「や」 蒼「ヤクルトをつけようじゃないか」 銀「…やぁよぅ」 蒼「ヤクルトプレイしかしない」 銀「…ごくり…」 銀「…ねえ、蒼星石…」 蒼「どうしたの? 神妙な顔して」 銀「…今更こんな事聞くのも変だけど、昔の事、恨んでない? ローザミスティカを奪った事…」 蒼「…またその話かい?」 銀「…私は時々、怖くなるのよ。本当は私のこと恨んでるんじゃないかって…」 蒼「何度も言ってきたじゃないか。もうその事は忘れたよって…」 銀「…分かってるわぁ。…ただ、時々発作みたいに…」 蒼「水銀燈…」 銀「あんな酷い事をした私に、蒼星石が恋人でいてくれる…その事が幻みたいに思えて…」 蒼星石は俯きながら話す水銀燈の頬を持ち、こちらを向かせるとそのまま唇と唇を重ね合わせた。 いきなりの事で呆気に取られる水銀燈。 更にそのまま蒼星石は舌で口をこじ開けて舌を絡め取った。 銀「うんっ、ん…」 しばらくして蒼星石は口を離した。二人の口を銀色のアーチが結ぶ。 蒼「…水銀燈、愛してる。何よりも」 銀「蒼星石…」 蒼「正直言うと、ローザミスティカを奪われたときも少し嬉しかったんだ」 銀「えっ?」 蒼「これでずっと水銀燈といられる、水銀燈と一つになれる…そう思えたんだ」 銀「そうなの…?」 蒼「それぐらい僕は君を愛してる。だから、何も心配しないで」 銀「蒼星石…」 蒼「…僕の言う事、信用できない?」 銀「そんなわけ無いわぁ。…私も愛してるから」 蒼「…もう、発作は治まった?」 銀「ええ。おかげさまで」 蒼「良かった…今日は一緒に寝よう」 銀「うん…」 蒼「水銀燈の髪って綺麗だね」 銀「そう? でも私も気に入ってるからそう言ってくれると嬉しいわぁ」 蒼「手触りも凄く良いしくせっ毛が全然無くて、色も素敵だし…」 感嘆したように溜息を吐き、水銀燈の髪を手ですいていく蒼星石。 それに気持ち良さそうにして目を細める水銀燈。 蒼「…ちょっと、羨ましいかな」 銀「あら? 私はあなたの髪も素敵だと思うわぁ」 蒼「お父さまが決めてくれた髪形だからね。僕も気に入ってるよ。ただ僕も長髪になってみたい、って思うことはあるよ」 銀「でも髪が長いと結構手入れとか大変よぉ」 蒼「うん、それは分かってるつもりだけどね…」 はは、と少し寂しそうに笑う蒼星石。 そんな蒼星石の髪を、今度は水銀燈が顔を近付けて梳き始める。 銀「私は蒼星石の髪が好きよぉ」 蒼「僕の髪が?」 銀「ええ。撫でているとすごく安心するわぁ。それにいい匂いだし…」 蒼「水銀燈だって同じシャンプー使ってるじゃないか」 銀「でも、私は蒼星石の髪の匂いが好きよぉ。優しい感じがして…」 蒼「そうかな?」 銀「そうよぉ。私は蒼星石の髪が好きだし、あなたは私の髪が好きなんでしょう?」 蒼「うん…」 銀「お互い好きなら、良いんじゃない? あなたはこの髪でいいのよ」 そう言って蒼星石の髪に自分の頬を乗せる水銀燈。 銀「…こうしてるとやっぱり落ち着くわぁ」 蒼「水銀燈…」 銀「大好きよぉ、蒼星石」 蒼「僕だって負けないくらい好きだよ。水銀燈の全部が」 お互いの良い匂いに包まれて、二人はそのままゆっくりと時を過ごした。 蒼「ねぇ、水銀燈…」 蒼「他の女の子と話さないで、他の女の子と電話しないで、他の女の子とメールしないで、他の女の子の相談に乗らないで、他の女の子に優しくしないで、他の女の子の胸で泣かないで、他の女の子に隣を許さないで」 蒼「僕以外の、女の子は、受け付けないで?」 蒼「水銀燈は、僕だけを見てればいいんだもんね!水銀燈の彼女は…僕なんだもんね!!!」 蒼「あははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!」 銀「乳酸菌摂ってるぅ?」 蒼「そう言えば最近取ってないなぁ」 銀「ダメよぉ、ちゃんと摂らなきゃ」 蒼「水銀燈が口移ししてくれたら毎日飲むけどね」 銀「な、何言ってるのよぉおばかさぁん///」 めぐの病室 銀「ちょ、ちょっと蒼星石…!」 蒼「なに?」 銀「や、止めてぇ…こんな所で…」 蒼「やだ。僕が我慢できない」 銀「蒼星石ぃ、冗談も程ほどにしないと…!」 蒼「あんまり声出すとめぐさん起きちゃうよ?」 銀「……!」 め「すぅ…」 蒼「寝てるみたいだね」 銀「んぅっ…!」 いきなりディープキスをされ、水銀燈が拒む間も無く口の中に下が入り込んでくる。 蒼「んむ…ちゅっ…」 銀「んっ、ぷぁ…」 蒼「はぁ…なんだかんだ言ってノリノリじゃないの?」 銀「そ、そんなことぉ…!」 蒼「…でも、こっちは随分と濡れてるみたいだよ?」 銀「あぁっ…!!」 蒼「めぐさんにばれるかも、って思って興奮しちゃった?」 銀「や、止め…」 蒼「でもこっちはそんなこと言ってないみたいだよ?」 銀「やぁ…! あぁ…!」 蒼「さてと、そろそろ本格的に頂こうかな」 銀「いやあぁ……!!」 次の日の朝。 め「水銀燈、昨日夢見ちゃった」 銀「どんな夢?」 め「あなたが泣いてる夢見たの。でもどこか嬉しそうで…変な夢よね」 銀「な、なななな…」
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それは遠い昔。まだ科学が発展してなく、天災は神々によって起こっているものと信じられていた時。 とてつもなく大きく、広い、海のような川があったとさ。 そこに近いある漁村で船の転覆事故が多発したために、ある少女が人身御供として出された。 少女は川に流され、ある島に流れ出た。 そこに住んでいたのは黒い着物を着崩した銀髪の美しい少女、名を水銀燈。 水銀燈は名前だけを思い出せないその少女を紅の着物を着ていたところから真紅と名付け二人で暮らしていくことになった。 そんな二人の楽しい生活が始まろうとしています。 ──にじりよる恋心 抜けるような青空と最初に形容したのは誰だったか。 正にその言葉がぴったりのある朝。真紅はゆっくりと目を開けた。 「朝御飯にするわよぉ」 川から流れてきたらしい魚を四匹抱えて来た水銀燈に起こされ、囲炉裏を囲む。 パチパチと火に焼かれた魚から食欲をくすぐる匂いが漂ってくる。 「はい、どーぞぉ」 「ありがとう」 塩で味つけられた串焼きの魚に一口かじりつく。 もうここに来て二週間。真紅はあることに気がついていた。 水銀燈はいつも真紅が起きる前に起きていて海から食べ物を持ってくるのである。 それは魚だったり海草だったり、時には野菜なんかも流れてくるというのだ。 別にそれだけならなんら疑問はないのだが、何故だか水銀燈は真紅を川に近づけようとはしない。 と言うより、そういう食べ物や他の必需品を持ってこようとする時、必ず水銀燈は一人で行くのだ。 「ねぇ、真紅。ほら、これ分かるぅ?」 「鞠……ね」 それは黄色地に赤や橙の牡丹の刺繍が入った綺麗な鞠だった。 「こんなものが流れてたんだけど、知ってるぅ?」 「水銀燈、知らないの?」 「えぇ」 なんか綺麗だから真紅が気に入るかなと思って。ニッと笑った水銀燈に真紅は正直、動揺が隠せなかった。 「これは、こうやってついて遊ぶのよ」 貸して。と言って、真紅は水銀燈から鞠を受け取った。 真紅は立ち上がると、唄を歌いながら鞠をテンテンとリズムよくついた。 かわむらのそばでみていたひゃくしょうが さかなをとってみたならば ぬぬっとしぶきをあげまして まっかなりゅうがおこりだす さかなをかえせ さかなをかえせ あわててさかなをかえしたら にっこりわらったせきりゅうが きんのひかりにつつまれて あっというまにきえたとさ 「へぇ、貸してぇ」 水銀燈は鞠を受けとると見よう見まねでテンテンと同じくつき始めた。 「歌、何だっけぇ?」 「もう一回歌うわよ?」 真紅がゆっくりとまた歌い出す。それに合わせて水銀燈が鞠をつく。 それにしても何故、水銀燈は鞠を知らなかったのだろうか。 水銀燈は自分の年齢は分からないと言った。しかし、見た目から言えば真紅よりも二つ三つ上に見えた。 「もう一回歌ってぇ」 「ええ! また?」 「お願いぃ!」 はぁ、と真紅はため息をついて再び歌い出した。 村にいた頃は、鞠つきで遊ぶのは幼子だけで、真紅はとうに遊ぶのをやめたと言うのに。 水銀燈はまだまだ楽しそうに鞠をテンテンとついている。 そうやって飽きるまで水銀燈に付き合っていると、既に日は暮れ、月が昇ろうとしていた。 「ねぇ、その唄どういう意味なのぉ?」 「意味って……知らないわ。私も姉と兄から教えてもらったもの」 「ふぅん」 水銀燈は真紅の膝の上で気持ち良さそうに髪をすいてもらっている。 何故か、彼女は一緒に暮らし始めてから、真紅の膝の上がお気に入りなのだ。 まぁ、これまで一人きりで暮らしてきたというのだからその寂しさの反動かもしれない。 「ねぇ、真紅。私ね、すっごい幸せよぉ」 笑顔で彼女を見上げた水銀燈は彼女の金糸をサラサラと撫でた。 「貴女がいて、とても嬉しいのぉ」 真紅の頬にペタリと触れた水銀燈の手はするすると唇まで滑る。 「大好きよぉ、真紅」 「すいぎ、……」 真紅の紡ごうとした名前は水銀燈の唇に寄って塞がれた。 「逃げないのぉ?」 確かに。普通ならば会って二週間足らずの同性の少女に。でも、何故か逃げる気にはならない。 「ふふ、真っ赤ぁ」 ぷに、と水銀燈の指がその名の通り真紅色に染まった頬を突いた。 「私も、大好き……よ」 口を開くとこんな言葉がスルッと出てしまった。 「一人だったのは、私も一緒」 ポツリポツリと真紅が言葉を紡ぐ。 心優しい姉も、力強い兄もいた。けれど、所詮はただの他人で。 村人からは蔑まれ、疎まれ、嫌われ、私は一生こうやって生きて、そして死ぬんだと思っていた。 「だけど、水銀燈。貴女に会えた……!」 「真紅ぅ……」 起き上がった水銀燈が真紅を優しく包み込んだ。 初めて本当の人の温もりを感じた真紅はぼろぼろと涙を溢しながら、水銀燈の胸元を掴んだ。 「辛かったのね、真紅。ねぇ、聞かせてくれなぁい? 真紅に何があったか」 ぐ、と唇を強く噛んだ真紅は水銀燈の胸に顔を埋めながらゆっくりと話し始めた。 自分には家族がいないこと。姉と兄に拾ってもらったこと。漁村に住んでいたこと。 そこで嫌われて蔑まれたこと。自分を嘲った人達が次々死んでいったこと。 そして、それは自分が悪いんだということ。 「私じゃないのに。私は、何も知らないのに……」 「大丈夫。大丈夫よぉ、真紅」 喚く真紅の頭を安心させるように、水銀燈は暖かい手で撫でた。 「ねぇ、真紅。こんな風に考えられなぁい?」 真紅は、神様に愛された子なのよぉ。 「は?」 「だからぁ、真紅をバカにした人達を見た神様が罰を与えたのぉ」 ニッと自信ありげに笑った水銀燈に思わず目を丸くしてしまった。 「それで人の命を奪う神様も神様だけどぉ、そんな村で暮らすより私とのこの暮らしの方がいいと思うでしょう?」 「まぁ、そうだけど……」 「そういうことよぉ!」 元気を出させるように背中を軽くポンと一つ叩くと、水銀燈は再び鞠を取り出した。 「ま、また!?」 「えー、だって楽しかったんだものぉ」 呆れながらもお願いされたら断れなくて、真紅は再び歌い始めた。 「ねぇ、水銀燈」 「ん?」 「私、少しは村の人達を恨んでもいいのかしら」 「当たり前じゃなぁい。むしろ、恨んでない方が変なくらいよぉ」 「そう、……そうよね」 かわむらのそばでみていたひゃくしょうが さかなをとってみたならば ぬぬっとしぶきをあげまして まっかなりゅうがおこりだす さかなをかえせ さかなをかえせ あわててさかなをかえしたら にっこりわらったせきりゅうが きんのひかりにつつまれて あっというまにきえたとさ 唄に合わせた水銀燈の鞠の音が、外を包む闇に消えていった。 続く 名前 コメント
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790 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/01/02(水) 01 47 05 「おはよう、水銀燈」 それは、全く意識せずに、口から勝手に出てきた言葉だった。 けど、口にしてから気がついた。 ……ああ、俺はこの言葉を言ってあげたくて、いままでやってきたんだな。 水銀燈はというと、目の前に俺が居ることが不思議でしょうがない、と言いたそうな顔で俺のことを見返している。 「おはよう、って……なんで士郎が……? だって私、さっきまで……はっ!?」 そこまで言いかけて、突如水銀燈の両目が大きく見開かれる。 みるみるうちに顔がこわばっていくのが見て取れる。 どうしたんだ……この様子は尋常じゃないぞ。 「士郎、敵は!? あいつらは何処にいったの……あっ!?」 「ちょ、あぶなっ!?」 まずい! 右腕が無い状態で、跳ね起きるのは難しい。 そのことを失念していたのか、水銀燈の上体は、バランスを崩して大きく泳いだ。 あわや、したたかに打ち付けそうになったところを、俺が両手でなんとか受け止めた。 「う、うぅ……」 「だ、大丈夫か水銀燈?」 「よっ、余計なお世話よぉ……。 ここは……それに、あいつらは?」 「ここは俺の家の土蔵だよ。 あいつらってのが誰だかしらないけど、そんな身体で無理するな」 俺がそう告げると、水銀燈の表情がまた変わった。 緊張の顔から、一変して恐怖の顔へと。 「身体……? ……あ、わたしの、からだ……」 水銀燈は、まるでいま気がついたかのように、自分の右腕……肘から先が存在しない腕を凝視した。 そして、背中へ首をめぐらせて……やはり無くなっている、片翼を見る。 「ない……私の翼、私の腕……。 そう、やっぱりアレは夢じゃなかったのね……」 水銀燈は、ドレスの裾をぎゅっと握り締めて、沈痛な表情で呟いた。 心なしか、その身体はかすかに震えているように見えた。 ……分かってはいたけど、やっぱりこういう水銀燈を見るのは……辛い。 「水銀燈……」 ……正直に言えば、俺は知りたかった。 彼女の身に何が起こったのか。 誰が、彼女をこんな目に遭わせたのか。 それを知ってどうするのか、なんてわからない。 ただ、水銀燈に悪意を持つ、明確な敵の存在を、知りたかった。 だが……それを語ることが出来るのは、目の前で震えている少女だけなのだ。 果たして、何があったのか、いま尋ねるべきなのか? それを迷っているうちに、沈黙は第三者によって破られた。 「水銀燈。 目が覚めたばかりで悪いのだけど、いいかしら?」 「貴女……真紅!?」 一歩前に進み出た真紅が、水銀燈を真正面から見据える。 その毅然とした態度に反応したかのように、水銀燈の顔から恐怖が拭い取られ、再び警戒心をあらわにする。 「ごきげんよう、水銀燈。 貴女がそこまで手酷くやられるなんて……正直、驚いているわ」 「何故貴女がここに居るの!?」 噛み付くような喧嘩腰で叫ぶ水銀燈に、真紅は眉をひそめる。 「何故、とはご挨拶ね。 私が居なければ、貴女は目覚めることが出来なかったのに」 「……一体、なにをしたっていうの?」 「私が、士郎に教えてあげたのよ。 薔薇乙女《ローゼンメイデン》の発条の巻き方を」 ちょ、真紅、その言い方は拙いだろ!? 案の定、水銀燈の怒りの矛先は俺の方に向かってきた。 「なんですってぇ……士郎! 貴方、よりによって真紅なんかに縋り付いたの!?」 「え、いや、俺から頼んだわけじゃ……」 「手を貸したのは私の勝手よ。 士郎はそれに応じただけ」 俺の弁明を遮って否定する。 ……流石に、くんくんに釣られてやってきました、とは言えないか。 「聞いて、水銀燈。 私の知りうる限り、アリスゲームで身体の一部を失った例は、今回が初めてよ。 今まではこんなこと、一度だって無かった。 ううん、薔薇乙女《ローゼンメイデン》の中で、こんな残酷なことが出来る子なんて居ないはずだもの。 そんな真似が出来る薔薇乙女《ローゼンメイデン》となると……ねぇ、水銀燈。 貴女がやられたのは、やっぱりあの、薔薇の眼帯の……」 「……うるさいっ!!」 「えっ?」 真紅の推理を遮ったのは、水銀燈の一喝だった。 真紅を睨み付ける水銀燈の目は、憎しみで燃え滾っていた。 「恩着せがましく言い寄ってきたと思ったら……うるさいのよ、賢しげにゴチャゴチャと! 今回が初めて? 今まで一度も無かった? だから何よ、一番最初に失敗したからって、それで水銀燈を馬鹿にしたいだけじゃない!」 「違うわ、水銀燈、私は……」 「違わないわっ!! そうやって真紅は、いつもいつも……私のことを見下してるんでしょう!? そんな貴女なんかに話すことなんか、ないわ! 今すぐここから、出て行きなさぁい!!」 ばさり、と。 久しぶりに見る、黒い羽根を大きく広げて……それが、半分でしかないことを、改めて思い知る。 その、片方だけの黒翼で、水銀燈は真紅を脅していた。 いや、これ以上ここにとどまっていたら、脅しだけじゃ済まないだろう。 それは真紅も感じ取ったのか、これ以上の長居をするのはあきらめたようだ。 「……どうやら、今日は無理のようね。 行きましょう、士郎、雛苺」 踵を返した真紅は、俺と雛苺に声をかけて、入り口へと立ち去ろうとする。 ちなみに雛苺は、入り口のところからおっかなびっくり中を覗いていた。 「え、でも……いいのか?」 「今はここに居てもなんにもならないわ。 水銀燈には、少し頭を冷やしてもらわないと。 ……だから、士郎、お茶を入れて頂戴。 そろそろお茶をするのにいい時間だわ」 そう言われて、俺は……。 α:今はそっとしておこう。真紅と雛苺と共に立ち去った。 β:一人だけにはさせられない。水銀燈とここに残る。 投票結果 α:0 β:5